パイルは生き物
同じように染めて、乾燥させて、選別をして、出来上がりのパイルの試験をして、同じ結果が出たとしても、同じように植毛ができるかというと、違うんです。
出来上がってからどのくらい日が経っているパイルなのか、植毛する日の気候や天気の状態によって、植毛のしやすさが変わるんです。私はこの言葉をうちの社員達によく言います。 パイルには植毛に適した水分の含有率があります。当然、それに合わせて作るわけですが、そうやって作っても使用するまでに期間が開くと、またそこで水分が蒸発してしまいます。さらには気候や天気で空気中の湿度が変わるので、その影響も受けます。では、どうするかと言うと、その日のコンディションに応じて植毛に適した水分率にするために、水分を足すんです。
でも、うまく加水しないとパイルが球状になったり、水分量にばらつきが出てしまいます。植毛しやすい良いパイルに仕上げるには、生き物を相手にするようにパイルと会話をして、作業を進めていく必要があるんです。
「パイルは生き物」、この言葉を自分で生み出したのならカッコよかったんですが、そうじゃないんです。今から三十年程前、今はもうない会社ですが、虎屋ウールという大きな会社の社長から言われた言葉です。
厳しい社長でしたが、良いモノには高い評価をする人でした。この言葉を胸に京都パイルは今日も良いパイルと良質なフロック植毛を生み出し続けています。